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(卒業論文,2015)自衛隊基地を用いた地域活性化施策に関する考察

【要約書】

自衛隊基地を用いた地域活性化施策に関する考察 ―茨城県小美玉市百里基地の事例を中心に―

研究の目的と方法
本研究は、人口減少時代に直面し、逼迫した自治体財政が、高額な財政支出をせずに、自治体の税収を増加させ、行政サービスの低下を抑止するするための施策を考察することを目的とする。 2009 年に内閣府は、自衛隊基地を活用した地域支援策を施行した施策では、基地を“地域資源”と捉え、地域活性化施策に適用する可能性を期待されている。 本研究は次の仮説を設定した。まず、①自衛隊基地を自治体にとっての“地域資源”と見直すことによって、地域住民の生活の質向上に繋げられるのか、また、②観光客の増加のための観光戦略に活用できているのかという 2 点である。 本研究では、自治体は自衛隊基地を“地域資源”と捉え、地域住民の生活の質の向上や観光政策へ基地を反映し、観光客も増加していることから、自衛隊基地と自治体との関係性も含め、前述の仮説を、①聞き取り調査②面接調査、③現地調査によって実証を試みる。

研究の内容
百里基地のある茨城県小美玉市は、小川町、美野里町、玉里村が 2005 年に合併してできた市である。百里基地は、「関東で唯一の戦闘航空団が所在する航空基地」である。設置されて、今年(2015 年)で 77 年になり、現在の百里基地が出来てから 56 年が経つ。 小美玉市の合併協議会が発表した、百里基地の飛行場が民間共用化することを活用するという方向性が挙げられていた。百里飛行場の民間共用化に伴う、開発付加人口の増加分を加えて推計していたが、実際には、20年前よりも減少している。百里飛行場の民間共用化は開発付加人口となり得なかったのである。“都市再生整備計画”によれば、「空港や公共交通機関の活用による交流人口拡大」を挙げている。しかし“基地”という単語がなく、交流人口の拡大として航空祭を活用については、一切の記載がない。従って、百里基地地域資源として認知や活用施策がないと推測でき、現状の百里基地
策は皆無に近い。 従来、実施された自治体(地域)と基地に関する先行研究では、その多くが沖縄県沖縄県の自治体と在沖縄米軍基地を対象にしている。そのため、自治体と自衛隊基地に関する研究は、現在、ほとんど十分な研究蓄積がない。また、米軍基地の悪影響に関する研究が多く、軍事施設のメリットを扱った研究は少ない。そこで、本研究を意義あるものに位置づけるために、経済的視点と文化的視点の 2 種類に分け事例をもとにケーススタディーを実施した。経済面では、平時に発生する消費活動や配偶者を伴う転居により発生する労働力の供給効果が大きいと考えられる。この効果を平時発生型需要・供給効果(以下、“平需”)とした。すなわち、航空祭による特別な需要のみの発生になる。平需とは異なる経済面の効果とであることから、航空祭発生型需要効果(以下、“需”)とここでは定義した。 文化面では、文化的・教育的な活動など、多彩な施策が考えられる。このような行為を文教関係行為(以下、“文行”)とした。当該都府県知事から要請を受けた場合、早急に行われる救援活動等の行為を災害関係行為(以下、“災行”)とした。

考察
筆者が定義する基地設置効果を明らかにするための研究の手法としては、聞き取り調査、面接調査、現地調査、車両調査を行った。それらの成果によって、得られた百里基地来場者は限定的な層に限られず、様々な世代や来場目的により、人々が訪れていた。また、ツアーとして企画されるほど、商業チャンスやイベントとしていることが確認できた。また、車両来場者の数も、筆者が調査した今回の結果だけで、最大8,666 人(全体の約 86.9%)が県外から訪れていることが解った。 また、文化面では、文行や災行の聴き取り調査によって、基地が設置されることにより、“自衛隊”の組織と、“自衛官”と“その家族”という個々人によって、設置や居住する地域で行われる行事の活性化期待できる。また、自衛隊の音楽隊による演奏会の実施が、基地所在自治体に居住する市民の、文化的な生活の向上の一助に繋がっていることも分かった。また、平時における火災などに対し、基地の消防隊が出動することや警察等関係機関として、小美玉市の防災訓練に参加することにより、行政や市民と災害への対策に取り組む行動は、基地所在自治体ならではのメリットであるのではないか。

結論
以上から、基地設置によって、基地所在自治体は経済面、文化面において、良い意味の影響を受けることが検証できた。しかし、現実には小美玉市では地域資源として活用しきれていない。平需は小美玉市の意志とは別のところで機能しているが、文教は自衛官自らの意志で実行されている。災行は小美玉市も能動的な機能を持ち合わせている。しかし、航需だけが活用できていない。百里飛行場が共用化され、航空祭こそ交流人口が大幅に増える機会である。市内外から訪れる数万人の来場者に対し、小美玉市は、交流人口の増加戦略として展開されていないことが解った。航空祭の来場者が、航空祭
のみに限らず、自治体だけでなく、商工会議所、民間団体や市民を含め、まちぐるみでの航空祭を行うことを政策提言したい。航空祭地域資源として捉え、活用基地所在自治体の基地があるメリットを最大限に活用する必要がある。つまり、航空祭地域資源とし、連携したイベントを組むことで、来場者が地域活性化の一助となることが確認でき、基地の見学から、小美玉市への旅行に締結させることが地域活性化施策とすることを結論とし、提言したい。 

参考文献 1) 小川町・美野里町・玉里村合併協議会「新 市建設計画」、2005 年 3 月 2) 小美玉市秘書課面接調査、2012 年
3) 第一回特別基地需要効果調査結果、平成 25
年9月8日 4) 基地百里 : 開拓農民と百里基地闘争(古関 彰一著,汐文社, 1966)
5) 玉里・小川地区「都市再生整備計画」、
2010~2014 年
6) 百里基地広報課インタビュー調査、2012~
2013 年
7) 百里基地ホームページ、2013 年閲覧
8) 平成 25 年度防衛白書、平成 25 年

http://file:///C:/Users/卓磨/Documents/M1/橋本卓磨卒業論文.pdf